アートワーク・ジャパン設立の契機
アートワーク・ジャパン理事長の小野京子は、表現アートセラピーのトレーニングをナタリー・ロジャーズ(カウンセリングの父と呼ばれるカール・ロジャーズの娘)より受け、日本に表現アートセラピーを紹介した表現アートセラピーの分野では第一人者である(表現アートセラピー国際学会の認定表現アートセラピストREATの資格を日本人で初めて取得)
小野京子は臨床心理士として医療、教育、産業分野で専門職として活躍する中、表現アートセラピー研究所を設立、表現アートセラピーを日本に紹介し、トレーニングコースを実施してきた。
小野京子がスイスの表現アートセラピー大学院(EGS)でさらに学びを深めている時に、その同級生のアンジェラ・エスターと出会った。アンジェラは、カナダでアート表現を学習向上に用いるプログラムを創設し、カナダ全土にその活動を広げていた。LTTA(アートを通した学び)と呼ばれるそのメソッドに興味を持ち、LTTAの指導者を日本に招き研修会を開いたのが、2004年である。
その後LTTAの訓練プログラムも行い、小学校等でアート表現を使った授業をプログラム卒業生が行っている。アメリカでも同様なメソッドがあることを知り、小野京子は表現アートセラピーのメッカであるレスリー大学で行われているアーツインテグレーションのメソッドに着目した。
レスリー大学の主任教授のリサ・ドノバン先生を招き、その研修会を行い始めたのが、2010年である。小野はセラピーという分野でなく、教育や学びという分野でのアート表現の効果や効能に目から鱗が落ちる思いがしたという。また生徒たちが目を輝かせ、学ぶ喜びを体験する姿にも感動した。
アートワーク・ジャパン理事長|小野京子からのメッセージ
アーツインテグレーションを体験したとき、アート表現を行いながら学ぶその楽しさに魅了されました。自分もこんな教育を受けたかったと思ったのは、私だけでなく、ほとんどの参加者がそのような感想を述べていました。
学ぶ喜びは、体や感覚、感情、思考などすべてを使って、自分の個性を表現しながらの学びになることです。そしてクラスメートと一体感や尊重を感じながら学ぶことができます。あたまだけで学ぶのではなく、体や、心、魂にまで及ぶ学びとなります。まさに人間力が向上する学習法でした。
そして不思議なことは、アート表現を用いる学習の研修会を開くたびに、私は深く感動して、涙が流れます。それが毎回です。学ぶことが自分とつながり(個性の受容、自己肯定感や自己効用感の高まりとも言えます)、他者とつながり、自分の世界が広がる喜びが、本当の学びだと思います。
表現アートセラピーを使って創造性を高めるワークショップを私自身が成人に行っていますが、そこで意外にも出てくるテーマが「つながり」という言葉です。人とつながっていると創造性が高まると参加者が言うのです。つながりや絆が創造性をサポートするようです。このつながりを促進するのもアート表現の特徴です。
カナダのLTTAは、アーティストを学校へ派遣してアート表現を通して主要教科を教える取り組みです。日本ではアーティストの中間層が少なく、このままの形で日本に適用するのが困難でした。
それに対してアメリカのレスリー大学のアーツ・インテグレーションのメソッドは、実際に教育に関わっている先生方にアート表現を学んでもらい、授業に生かしてもらうという方法です。素人でもアート表現を学びに行かすことが可能なのです。
2014年10月からこのアーツ・インテグレションのメソッドを中心に、LTTAのよさも取り入れ、発達心理学や心理療法の基礎も学びながら、子どもに具体的にどのように接し、アート表現を使って教科(算数・数学、国語、理科、社会)をどのように教えるかを習得する、NPO認定アートワークエデュケーターの養成コースを開講します。一対一の教授法とともにグループでの教授法を体得します。
卒業後は、自分の子どもの学習指導、自宅での塾開講、NPOで講師になる道が開けます。NPOでも順次、学習向上のイベント開催、独自の塾開講をめざします。子どもたちが成績不振に陥ると、自己評価も下がってしまいます。楽しく学んで成績が上がり、学ぶことで全人的な成長をサポートするのがアートワークエデュケーターです。
アートワーク・ジャパン代表理事 小野京子
アートワーク・ジャパン♦︎これまでの活動
・日本財団より2回助成金(LTTA事業)をいただいています。
・2009年7月より月一回、表現アートセラピーワークショップを開催中
・2013年4月より 「子どもの表現アートアトリエ」ワークショップを開講中(表現アートセラピー研究所と共催)
・2012年秋より 表現アートカフェ開店しています(不定期)
・2012年7月 「表現アートの最先端(アート体験は脳機能を向上させ学習効果を上げる)ワークショップ」が開催されました(講師:リサ・ドノバン)
・2010年7月「多様なアート表現を用いた教育法 レスリー大学出の試み」のワークショップ開催(講師:リサ・ドノバン)
・2007年以降 小学校でのLTTA授業が行われている
・2007年11月 LTTAアーティストトレーニング(ファシリテーター養成)開催
・2007年3月 表現アートセラピー体験ワークショップ開催
・2005年11月 カナダLTTA講師による授業を江東区の公立小学校で実施
・2005年11月 カナダLTTA講師による研修会
・2004年 カナダLTTA講師による日本初の研修会
小野京子(アートワーク・ジャパン理事長)の経歴
臨床心理士。国際表現アートセラピー学会(International Association of Expressive Arts Therapy)認定表現アートセラピスト。表現アートセラピー研究所代表。前日本女子大学特任教授。元神奈川大学大学院非常勤講師。日本産業カウンセラー協会東京支部講師。
日本女子大卒。 日本女子大大学院(児童心理)修士号取得。 米カリフォルニア州立ソノマ大学大学院(心理学)修士号取得。 米国パーソンセンタード・エクスプレッシブ・セラピー研究所訓練プログラム卒業。 Europe Graduate School(スイスにある表現アートセラピーの大学院)のAdvanced Study修了。ゲシュタルトセラピーのトレーニング修了。
帯津三敬病院で心療内科やがん患者の心理療法にかかわったのち、さいとうクリニック、めだかメンタルクリニックにてアートセラピー、グリーフワーク等のグループ療法を担当。東京都の職員研修、産業カウンセリング協会、日本家族カウンセリング協会等での講師をつとめる。 スクールカウンセリング、企業(大手銀行)でのカウンセリングや研修にかかわった。
◆主な著書
・「表現アートセラピー入門」誠信書房
・「癒しと成長の表現アートセラピー」 岩崎学術出版社
◆主な訳書
・「表現アートセラピー」ナタリー・ロジャーズ著誠信書房(共訳)
・「芸術と心理療法」ショーン・マクニフ著 誠信書房