表現アートセラピーとは

表現アートセラピーは、統合的な芸術療法です。絵やコラージュ、粘土や造形といったビジュアル(視覚的)アートや、からだを使った表現(ダンス、ムーブメントセラピー)、声や音楽(ミュージックセラピー)、詩や散文、物語を書く(ラィティング)、ドラマなどさまざまな表現を用います。

表現アートセラピーは、Expressive Arts Therapyの訳です。表現媒体をひとつに限定せず、自分が表現したいものを、時に応じて絵や粘土として表現し、またからだの表現としてムーブメントやダンスで表現します。時に表現は、詩や文章、物語という形になったり、声や音楽での表現、ドラマでの表現になります。また一つの表現、たとえば絵に描かれていることを、次にムーブメントで表現したり、詩を書くことで、そのテーマを深めたり発展させることもできます。

表現アートセラピーは、あらゆる表現へ扉を開いています。描く、作る、書く、踊る、歌う、演技する中で、視覚、聴覚、触覚、声、運動感覚など、からだの五感すべてが用いられます。一般には、アートセラピー、ダンス・ムーブメントセラピー、ミュージックセラピー、詩歌療法、ドラマセラピーと呼ばれている芸術療法を、統合的、発展的に用いていく療法です。

表現アートセラピーがすべての表現を用いる理由は、それぞれの芸術的表現が互いに刺激し合うものであり、またもともと深く結びつく性質を持つからです。昔から祭りや儀式には、踊りがあれば、音楽や歌があり、衣装があり、装飾がありました。そしてそこにドラマやストーリーがあり、演じられました。詩が語られれば、音楽がつけられ、それが演じられたのです。そのようにいろいろな芸術表現は、密接に結びつき、互いの表現を深め合い、サポートする性質を持っています。そして異なる表現は、心に異なる刺激と作用をもたらします。

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※表現アートセラピーとその他の芸術療法
 芸術療法には、いろいろな専門分野とアプローチがあります 。絵や粘土などビジュアル(視覚的な)アートを用いるアート セラピー、ダンスやムーブメントなどからだの動きを用いるダ ンス・ムーブメントセラピー、音楽や歌を用いるミュージック ・セラピー、演劇やドラマを用いるドラマセラピー、詩や物語 などを書く文芸(詩歌)療法などです。表現アートセラピ ーは、一つの分野に限定せず、さまざまな表現を用いる芸術療法です。 

そして芸術療法には精神分析的なアプローチをベースにする もの、ユング派をベースにするもの、人間性心理学をベースに するものなど、さまざまな心理療法の流派に基づいています。 芸術療法を行おうとする場合には、それぞれの専門 分野でのトレーングを受ける必要があります。

■表現アートセラピー 日本での展開

 表現アートセラピーが台頭した1960年、70年代には、万人による表現の重要性が認識され、創造的な表現を社会や人々のために用いようとする芸術界の動きが起こり、人間の体験や感情のすべてを言葉で伝えようとするときの言語の限界性、異なる形態での象徴的な表現が人間の基本的欲求を満たすものであるという心理学的な背景に触発され、ひとつのアート様式での表現という枠を超えた、自由な表現を謳歌する表現アートセラピーが生まれました。

欧米では現在、表現アートセラピーは、医療、心理臨床、カウンセリング、ソーシャルワーク、看護、教育、宗教などの分野で用いられています。最初は精神科の病院やクリニック中心で用いられたものが、今では学校、ホスピス、地域センター、災害センター、教会、刑務所、法廷、文化施設、そして仕事場へとこの動きは広がっています。精神障害、認知障害、トラウマと喪失、アディクション(嗜癖)、発達障害、人間関係の葛藤、ストレスや多種の悩みなどに対処し、対象も子どもから成人、高齢者とすべての年齢層にかかわっています。

日本では表現アートセラピーの取り組みはまだ始まったばかりです。現在私を含め、表現アートセラピーのトレーニングを海外で受けた者たちが、それぞれの場で活動しています。病院やクリニック、地域センター、学校や大学、そして各自の講座やクラスで表現アートセラピーを実践しています。しかしまだその数は多くありません。日本でもトレーニングが始まり、これからこの取り組みがさまざまな場で浸透していくことを願っています。

表現アートセラピーは、どんな文化圏や国であろうとその真価を発揮します。日本では自己表現に関して、特にトラウマ(上手、下手の評価を下され、表現する気持ちが萎えている)を持った方が多いように見受けられます。その意味で「評価を下さず、人をありのままに尊重する」というアプローチ(パーソン・センタード・アプローチ)が大切になります。言うことは簡単ですが、実際にそれを身につけることはたやすいことではありません。私たちは、表現に対して「上手下手、おもしろい、つまらない、すごい、たいしたことない・・・」など技術や熟練度で判断することに慣れてしまっているのです。ですからトレーニングと修練が必要になってきます。そのスキルを身につけたファシリテーターが今後よりいっそう増え、いろいろな場で活躍していってもらいたいと思います。

特に「表現アートセラピー」と呼ばなくても同様の理念を持って教育や治療の場で実践されている方々は、この日本中にたくさんいることでしょう。またパーソン・センタード・アプローチと呼ばなくとも、相手の人格をありのままに受け入れ尊重する態度を身につけている方も多いと思います。そして今私が行っているのは、絵画、粘土、ムーブメント、ダンス、音楽や声、サウンド、詩やものがたり、ドラマなどですが、それ以外にも表現アートセラピーに導入できるモダリティ(様式)があるかもしれません。それは日本に昔からある伝統的な表現方法かもしれませんし、最近生まれたものかもしれません。そうした未知なる様式と表現アートセラピーの理念が統合されて、日本的な表現アートセラピーが生まれてくるかもしれません。それほど表現アートセラピーは自由であり、柔軟であり、誰にも、いつでも実践できる普遍性を秘めたものであると感じています。

アートに触れることで人のもつ潜在力、無意識のリソース(資源)が活性化されることをかんがみると、これから日本でさまざまなアート表現や表現アートセラピーが医療や教育の中で取り入れられることを願ってやみません。

アートワーク・ジャパン 代表 小野京子
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■表現アートセラピー 各分野でのニーズと可能性 

●医療
* 慢性病や難病、末期の患者さんに対して行うことで、病気に対する免疫力の向上、生きる力をサポートする。
* さまざまなトラウマ(虐待、災害被害、犯罪被害)に対処し、回復を援助する。

●心理臨床
* カウンセリングやグループ療法の中で用いることで、クライエントの潜在的なリソースを活用でき、個性が自覚され自己評価が向上する。またセラピストとクライエントのコミュニケーションが高められる。

●教育
* さまざまなアート表現を教室で用いることで、より楽しく学びながら自然に学力が向上する。
* 表現アートセラピーを導入することで、子どもの心の成長をはぐぐむことができる。
* 子どもたちの創造性を伸ばす。

●福祉
* 高齢者の方に導入することで、生活の質の向上、病気の予防、自己評価や身体機能を向上させる。
* さまざまな障害を持つ方に対して、生活の質の向上、自己評価を向上させる。

●産業
* 創造性を開発する方法として用いる
* 職場のストレス軽減として用いる

●芸術教育
* 芸術教育の中で用いられることで、生徒の可能性や表現の幅をさらに広げることができる。

●一般
* いろいろな心の悩みや葛藤の解決
* 潜在力や創造性をのばす
* ストレス解消
* 自己理解を深める
* 心身の健康増進

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